旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2018年8月5日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

歴史あるロンドンの五つ星ホテルで開かれたSKYTRAX表彰式

JALは悲願の5つ星とベストエアラインエコノミーシート受賞で喜びの赤坂社長と社員の皆さんzoom
JALは悲願の5つ星とベストエアラインエコノミーシート受賞で喜びの赤坂社長と社員の皆さん

SKYTRAXとは
サービス競争でしのぎを削る世界のエアラインが目標とする“SKYTRAX”のワールド・エアライン・アワード。SKYTRAX社は1989年に設立したイギリスの航空サービス調査会社です。アワードはエアライン界のオスカーと言われその動向に注目が集まります。大きくはエアライン・空港・空港ラウンジの格付けになっており、代表的なのが1999年に確立されたワールド・エアライン・アワードです。エアライン・オブ・ザ・イヤーは、毎年、欧州航空ショーの時期に100位までのランキングとともに発表され、各カテゴリー60以上の部門と共に表彰されます。

2018年の表彰
2018年7月、発表の場に選ばれたのはロンドンで150年の歴史を持つ5つ星ホテルザ・ランガム。英国人のたしなみとして始まった「アフタヌーンティ」の発祥とされるレストラン「パームコート」はここにあります。ファーンボロー航空ショー開始翌日の17日は午前10時半の表彰式開始を目指し、世界のエアラインの客室乗務員が制服姿でホテルのロビーに現れます。日本からは、JALとANAがノミネートを受けて出席していました。

ロンドン市街中心部に位置するザ ランガム・ロンドンzoom
ロンドン市街中心部に位置するザ ランガム・ロンドン

表彰式前の様子
表彰開始前の様子は、リラックスしたもの。客室乗務員の制服は、それ自体が宣伝素材。国の意匠を凝らしたデザインで魅せています。バンケットルームに向かう場所のあちらこちらにSKYTRAXのマークの入ったアワードサーティフィケイトが飾られていますので、多くのエアラインが記念撮影をしています。ここでは、普段は目にする事の無いエアラインの壁を超えた光景に出合えます。緑あふれるテラスも、記念撮影に相応しい場所。太陽光の下で表彰に集まる顔は、自信にあふれています。ボールルームに向かう通路では、SKYTRAXが用意した記念品が、参加したエアラインのスタッフに配られます。今年はカバのぬいぐるみが入っていました。

3社のコラボレーションは 外側からAVIANCA COLUMBIA、ANA、タイ国際航空zoom
3社のコラボレーションは 外側からAVIANCA COLUMBIA、ANA、タイ国際航空

式の進行
司会・進行はSKYTRAX社CEOのエドワード・プレイステッド氏。ボールルームの舞台の上で受賞エアラインの代表にアワード楯を渡し、記念撮影に納まります。

まず、4つ星エアラインに選定されたベトナム航空とエバー航空が呼ばれます。
両社ともに3年連続の表彰です。次に新しく5つ星エアラインとなったJALが呼ばれました。悲願の最高位を授与されるのは、同社代表取締役社長の赤坂氏。ベストエコノミークラスエアラインシートも受賞しました。

今年の動向は
ここからは、60以上にも及ぶ各カテゴリーの賞が次々に発表されます。
ANAは、ベストエアラインスタッフ・アジアと、ワールドベストエアラインキャビンクリンリネスの2冠を受賞。エアラインオブザイヤー3位の位置も素晴らしいものがあります。栄えある1位は昨年2位のシンガポール航空が2008年以来のTOPへ返り咲きとなりました。

ANAが受賞したのはベストエアラインスタッフアジアとワールドエアラインキャビンクリンリネスの各賞zoom
ANAが受賞したのはベストエアラインスタッフアジアとワールドエアラインキャビンクリンリネスの各賞

今回の表彰でのトピックスは、最もサービスの改善が見られた「ワールド・モストインプルーブメント・エアライン」に中国南方航空が選ばれたこと。中国本土系のエアラインは長らくこのアワードから遠ざかっており、唯一海南航空だけが2009年に4つ星エアラインとして表彰を受けたのが中国エアラインの受賞歴の全てでした。これを9年振りに塗り替えた中国南方航空の功績は大きいものがあります。

中国本土のエアラインも常連に上がって来るでしょうか 中国南方航空ですzoom
中国本土のエアラインも常連に上がって来るでしょうか 中国南方航空です

また、航空先進国と言われながらサービスアワードのノミネーションから抜け落ちているのはアメリカのエアライン。デルタ航空が唯一推薦までいくのですが、表彰には至っていません。北米というくくりにしてようやくエアカナダがランクインします。昨今の景気回復によって、サービスへの投資も積極的になってきましたので、来年以降はサプライズがあるかも知れません。

SKYTRAX考察
SKYTRAXの不思議と言えるのが、地元エアラインの存在。
革新的と言われるサービスで有名なヴァージントランティック航空のみならず、ブリティッシュエアウェイズ(BA)の名前も一切出てきません。特にBAは2006年にエアラインオブザイヤーとなったのが信じられないくらいです。このあたりを地元の人間にインタビューしたのですが、なかなか厳しい意見がでてきました。BAは、LCCの出現で経営が厳しくなってからコストカットでサービスの低下を招いたことで、英国民では良く思わない人がいるというもの。ただ、私自身の体験として、今回のヒースローへはアメリカからBAに搭乗し、さすが紳士の国のエアラインのサービスとして、非常に満足して到着していますので、人それぞれ。サービスの評価は本当に難しいと思います。

会場の様子zoom
会場の様子

辛口な意見
メディアの一員としては、表彰の結果を伝えるだけでなく、本当にSKYTRAXって信用できるかと常にアンテナを張っておく必要があります。
現段階で、エアラインの評価機関として注目されているのがSKYTRAXであることは間違いありません。他にも、オーストラリアの「エアラインレーティングス」がありますが積極的に報道している姿を見掛けません。

評価を受ける側が宣伝すればするほどSKYTRAXの価値を高めることにもなります。こんな評価は不要ですというエアラインばかりだとアワードが成り立たない訳ですから。それを表明したのが2018年の今年に入ってSKYTRAXの評価対象から外れると宣言したターキッシュエアラインです。過去にも2014年に中東のエティハドエアラインが同格付けから離れると宣言しました。SKYTRAX側は、透明性のある評価をする必要があることは言うまでもありません。

来年は、昨年同様パリのエアショー会場ミュージアム内での表彰式になりそうです。今年のような華美な演出よりも、内容が大事だと改めて思いました。

SKYTRAX World Airline Award 
⇒ https://www.worldairlineawards.com/

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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