旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2018年7月23日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

ファーンボローに世界の空が集まる

デモフライトを行うボーイング787-9zoom
デモフライトを行うボーイング787-9

エアショーとは
毎年初夏に欧州で世界の航空業界が注目する航空ショーが開催となります。奇数年はパリで実施、偶数年の今年はロンドン郊外のファーンボローで開かれました。

ファーンボローは、ロンドン市街地から南西方向に60キロの距離ハンプシャー州にあります。普段のファーンボロー空港は、ジェット機のチャーター便が運航されているだけの定期便の無い場所です。それが、二年に一度は世界中が注目する場所となります。

今年の航空ショー
2018年のファーンボロー国際航空ショー(FIA)は7月16日から22日まで開催されました。20日まではビジネス中心のトレードデイ。21日からの2日間は一般開放日となります。
航空機メーカーの売り込みの場所としての機能を有しており、世界二強ボーイングとエアバスを中心にエアラインや航空機リース会社から受注機数を競います。世界52か国から1,500もの業者が7万㎡の会場に集結します。

会場全景をカーゴビレッジ方向から見るzoom
会場全景をカーゴビレッジ方向から見る

MRJの飛行
今年は、MRJが航空ショーで初めて飛行展示をするということで注目を浴びました。地上車輌との接触で2日目の飛行は中止となりましたが、会期中3回のフライトを成功させました。
16日の初展示飛行では、離陸時でもエンジン音が大きくなることなく、静かなまま滑走路24から機体を大空に持ち上げました。ギアダウンで2周。ギアアップで1周したのちに着陸。たった7分間ではありましたが、MRJが世界の表舞台に立った瞬間です。
ボーイングはエンブラエルとの提携を開始し、MRJのライバル機E2ジェットを手中にしました。三菱航空機は受注競争に取り残された形ではあるものの、親会社の三菱重工業ではボーイング向けに主翼を製造しており、ボーイングとは三菱との関係は切れないとの見方をしています。

MRJ7月16日のデモフライト初日の離陸zoom
MRJ7月16日のデモフライト初日の離陸

二強の状況
ボーイングは合計673機の受注を受けました。対するエアバスは合計431機。ワイドボディー機の比率がボーイング19%に対しエアバス18%とほぼ互角ですが、エアバスの機数には、本来ボンバルディアCシリーズの60機も含まれていますので、今年はボーイングの圧勝となりました。総計1,920億USドルの商談が成立した訳で、航空機産業の隆盛は当分続きそうです。

MRJライバルのエンブラエル
ボーイングと提携関係を発表したブラジルのエンブラエルですが、同社単独でも302機で150億ドルの受注を発表しており、今回受注の無かったMRJとしては彼らの背中が遠く離れて行くばかりです。
昨年のパリのエアショーでProfit Hunterの呼び名を披露して以来、機首部分の塗装は変化しています。パリエアショーでイヌワシ、シンガポールエアショーでトラ、そして今回のファーンボローではサメと、徐々に過激化していっているように思えます。

MRJのライバル機 エンブラエルE2ジェットzoom
MRJのライバル機 エンブラエルE2ジェット

フライトディスプレー
航空ショーの扱う商材は言わずもがなの航空機。地上展示だけでなく飛行展示が見られるのも大きな魅力です。ファーンボロー空港は、2,600mで24/06方向の滑走路が1本あります。今回のショー会場は本来の空港ターミナルビルの北側に対して南側。東側から入口が広がっています。西に向かってカーゴビレッジが広がり、滑走路脇には観覧席が設けられていました。
ボーイングでの印象的なフライトは727-2S2F型。地元Oil Spill Response社の石油流出時の薬剤散布に活躍する機体です。フェデラルエクスプレスで1984年に登録された34年選手。散布用のバーを機体後部に設置して、4機のブレーズエクストラ機とともにデモンストレーション飛行を行いました。このように、商談に関係の無い航空機でも観客を喜ばせようと遊び心で飛ばしてしまう気概が感じられて嬉しい限り。

対するエアバスは、ボンバルディアCシリーズのリネームとは言えグループ入りしたばかりのA220-300や引き渡し直後のA330neoを飛行させてアピール。A350-1000とワイドボディー2機を飛行させて会場を沸かせました。

石油流出薬品散布機 ボーイング727-2S2Fzoom
石油流出薬品散布機 ボーイング727-2S2F

貨物機
貨物機の地上展示で存在感を示していたのはボーイング。
2機の747-8Fを並べていました。地元イギリスのカーゴロジックエアとカタール航空が貨物機ならジャンボだと主張しています。また、ボルガドニエプル航空のアントノフAN124-100型もその大きさを誇示していました。搭載量は2機種ともに100トン超え。船に例えるとコンテナ船とバラ積み船の違いがあります。アントノフのバラ積みでの100トン搭載は、単体で大型貨物を想定しますが、機内での固縛も含め搭載は迫力がありそうです。報道されにくい貨物機の世界。世界の物流の中で重量は船には敵いませんが、貿易統計に出る貿易額に貢献しています。

貨物機揃い踏みzoom
貨物機揃い踏み

観光をするだけが旅ではなく、このような展示会への参加だけでも旅の一つの形として存在します。ヒースロー空港からの移動はUberで。宿は鉄道で一つ隣町フリートのAirbnbを体験。自身の中でも旅の形が進化してきています。

撮影:TAMRON 18-400㎜ F3.5-6.3 Model B028 使用
⇒ http://www.tamron.jp/product/lenses/b028.html

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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