旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライター岩佐 史絵
  • 2013年1月18日更新
贅沢☆旅スタイル
Writer:岩佐 史絵

“世界一の島”へ! 母子楽々ふたり旅

まさに楽園と呼ぶにふさわしい、この景色! しかも空いてる~zoom
まさに楽園と呼ぶにふさわしい、この景色! しかも空いてる~
子どもは海が好きなもの。子どものくせに寒がりのウチの娘ときたら夏場はもちろん真冬でも突然「ママ、海で泳ぎたい」とか言いだす(←泳げないのに)。「夏になったらね」となだめておけばいいものを、親ばかなあたくしは娘の願いをかなえてあげることにしたのだ。いや、親ばかだからではなくて、単に自分が行きたかっただけかもしれない。あの“世界一の島”へ……。
 ところで、あたくしの子連れ旅行の信条は、自分も楽しむことである。母子二人ででかければ荷物は全部自分で持たなくてはならないし、子どもの世話や子ども目線で楽しむことに明け暮れがち。しかしスポンサーは自分だ。自分が楽しくなければ意味がない。もちろん、子どもが楽しんでくれれば親もうれしいものだが、全員が楽しめて初めて旅行は「してよかった!」となるのではないか。

 さて。“世界一の島”、それはフィリピンのボラカイ島である。もともとダイビングなどでよく知られた島だが、昨年、米誌『Travel+Leisure』の読者投票で「もっともすばらしい島」として見事一位を獲得してからはさらに注目度が高まっている。読者投票なので選んだ理由は人それぞれだと思うが、その美しさには定評があり、実は20年ほど前にも別な雑誌の読者投票で1位を獲得したことがある。
 日本からなら暖かなビーチリゾートへひとっ飛び、というのは本当にラッキーなこと。“世界一”までだって、それほど遠くはない。成田空港からANAでたったの4時間、しかも、今回はうっかり4歳児がビジネスクラスデビューという記念すべきフライトとなったが、その搭乗レビューはまた今度。空港のすぐ近くにホテルもあるし、とにかく楽々である。乗り継ぎのためマニラで1泊し、翌朝のんびりとホテルをチェックアウトして国内線を利用、ボラカイ島まで行くボートの船着き場があるカティクランまでは1時間ほどのフライトだ。
観覧車の前から動かなくなっちゃった……。小さいながら、15周以上はしていると思われる、所要時間の長さzoom
観覧車の前から動かなくなっちゃった……。小さいながら、15周以上はしていると思われる、所要時間の長さ
 ボラカイ島きっての景勝地といえば、「ホワイトビーチ」。4㎞にわたってまばゆいばかりの真っ白なビーチが横たわり、そのビーチ沿いにはレストランや土産物屋が軒を連ねる繁華街が広がる。今回の宿はその端っこ、にぎやかなエリアからはちょっと離れた、それでもホワイトビーチ沿いにある「ディスカバリー・ショアーズDiscovery Shores ( http://www.discoveryshoresboracay.com/ )」。ここまで離れていると喧噪はまったく聞こえず、ボラカイ島らしいのんびりした雰囲気だ。
 そのうえ、目の前は海である。しかもすっごい遠浅。どこまで行っても娘の腰くらい、大人の膝くらいの深さだ。波はあるものの、大きな波ではないので波と追いかけっこが楽しめる。なによりも注目すべきは、海水の透明度だ。まるでプールの水のようなクリアウォーターは波打ち際でもシュノーケルがなくても魚が泳ぎ回るのが見られ、「ママ、おさかな捕まえて!」と娘は大興奮。もちろんしえ母子に捕まるようなのろまな魚は一匹もいなかったが、じっとしていると足の間をゆっくりとすり抜けていくのでちょっとした熱帯魚観賞が楽しめる。
 デッキチェアはリゾートの敷地内に設置されており、水やちょっとしたスナック類も用意されているので、荷物を置いてビーチで遊んだり景色を眺めながらうとうととお昼寝したりも可能。砂浜で遊ぶ子どもを眺めつつ、ホテルのバーから冷たいものでもいただいてまったりしたい。

 夕方になれば歩いて、もしくはペディキャブ(エンジン付き自転車タクシー)などで繁華街へ。お土産屋、レストラン、バーなどがひしめく中、小さな観覧車を発見! 当然娘はロックオン。乗りましたとも、2回も! 1回50ペソ(約100円)、観光客値段に設定されているとはいえ、娘の大喜びぶりを見たら「まぁいいか」と満足。子ども心をわかっているフィリピンである。
 とかく治安の悪さがささやかれるフィリピンだが、このあたりは本当に安全。警官もパトロールしており、夜の外出も心配ない。ちびっこを連れ歩いている旅行者が多いのも子連れにはちょっとした安心感。バーなどもオープンエアなので子連れでも入りやすい。レストランも迷うほど多いが、ビーチサイドには食材を陳列したバーベキューレストランが並んでいるので、大きなエビやカラフルな魚を眺めながら品定めするのが楽しいだろう。

始めは怖がっていた娘も、最後には乗りたい! とせがむほど。これはおもしろい!zoom
始めは怖がっていた娘も、最後には乗りたい! とせがむほど。これはおもしろい!
 子どももうれしいが、せっかくだから母もちょっとのんびりしたいぞ。ということで、島の南に位置する5つ星リゾート、「シャングリラShangri-La Boracay Resort & Spa ( http://www.shangri-la.com/jp/boracay/boracayresort )」へ。シャングリラといえば五感に働きかけるオリジナルスパ「氣スパChi-Spa」が有名なのだが、目的はそれだけではない。ここには非常に充実したキッズクラブがあり、母がスパで至福の時を過ごしている間、子どもは専任スタッフと一緒にのびのび遊べ、退屈知らず。スタッフとの会話は英語のみだが子どもにはそんなことは問題にならないらしく、3時間のスパ終了後に迎えに行くとがっかりした顔をされてしまった。キッズクラブの利用料はゲストなら無料。巨大な滑り台は大人でもかなりスリルがあり楽しいので、子どもと一緒に遊ぶのもおすすめだ。

 ほんの十数年前までは水道も整備されていない未開の地であったボラカイ島。急激なリゾート開発が進み、以前とはまったく違った雰囲気になった今もなお人気を保っているところがすごい。実は「何もないときのほうがよかった」という声もあるものの、今のボラカイ島は子連れ、特に母子だけで行くには本当に楽。島まで行くボートは頻繁にくるし、荷物はクルーが積み込んでくれる。レストランなども清潔で、子連れにも柔軟に対応してくれるのでなにも心配する必要がない。この柔軟性、東南アジアならではともいえるが、とにかく子連れにはありがたいのである。
 帰国してからもずっと「ママ、またフィリピンに行きたい!」と言い続ける娘。娘にとっても、ここは“世界一”だったらしい。
Writer:岩佐 史絵
旅に貴賎なし! 旅をしていないと血中旅度が下がってお腹が痛くなってしまうほどの旅好きが高じてトラベルライターに。ONもOFFも旅一色。妊娠中も子育て中も闘病中も行きたいところには必ずでかける体力自慢。著書『人生のサプリを見つける旅ガイド』(ソニーマガジンズ刊)ほか。
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