旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2017年10月19日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

空旅を快適にするATRの航空機

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先月受領したばかりの2号機に乗りました

快適さを目指す機体が増えてきた
エアラインのサービスランキングに注目が集まっているのと同じように、快適性を前面に出す機体メーカーの航空機が増えて来ました。
LCCの台頭によって、レガシーエアラインは差別化を図るために快適性の向上を目指す。旅行客にとってはいい話です。

長距離を飛ぶ機体は、旅客の疲労と直結しますので技術の進化と共に先端を行っています。ボーイング787などの機体素材に炭素繊維が多用されることによって加湿の可能になった客室は、身体に優しい環境をもたらしてくれました。

近距離を飛ぶ航空機にもより快適な空の旅を提供しようという試みが欧州の機体メーカーで行われました。名付けて「ATRとともに格別な空の旅を」

奥には一号機が駐機し、二機並びましたzoom
奥には一号機が駐機し、二機並びました

ATRとは
ATRは、エアバスとイタリアの航空・宇宙産業で大手のレオナルドとの合弁企業。2種類の大きさの異なるターボプロップ機を製造します。

100席以内のリージョナル機の分野は、JET機がシェアの多くを占めますが、燃油の高騰を理由に経済性の高さが求められるようになりました。圧倒的なスピードの差があるように思うのは、長距離を飛ぶ場合。近距離路線では、さほど気になる時間差が出ません。

ターボプロップ機市場で日本はボンバルディアが先行し、40機以上が飛び回っています。ATRは天草エアラインで1機。JAC日本エアコミューターで9機発注したうちの2機を受領して運航するのみです。

鹿児島空港でのバス案内 地元の人の足でもありますzoom
鹿児島空港でのバス案内 地元の人の足でもあります

ATRは、アジアでは中国、インドの人口の多い国と共に日本での市場開拓に力を入れます。最大のコンペティターをボンバルディア機と捉え、買い替え需要とともに、離島の多い島国に適した機体として自信を持って売り込みます。

ATR社がメディア向けに選んだ体験搭乗の路線はJACの飛ぶ鹿児島~沖永良部です。同路線は、550kmほど離れた距離でライバルのボンバルディア社DHC8-Q400も飛びますが、エンジン出力の高い俊足の同型機は所要時間75分。ATR機では90分と時刻表上往路で15分の差になり、復路ではそれが5分の差となります。

視界のいい機窓zoom
視界のいい機窓

ATR搭乗記
JACが導入したのは48人乗りのATR42-600。
実際に搭乗してみると、機体の特徴が見えてきます。
搭乗時は、後部から乗り込むのが新鮮です。ギャレー、トイレやジャンプシートなどの装備は全て後部に集中。機体前方に向かって乗り込んでいくのが新鮮です。

最前方、右舷側の4人で向かい合わせになるシートは、Q300型機で経験済みの仕様です。
座席はグループらしく、JAL SKY NEXTに準拠したスリムな黒革シート。小ぶりなエンジンの先端に6枚のプロペラが鈍く光り、力強く見えます。

巡航高度が2万フィート(約6,100m)だと気圧は高度1,000mと同程度。軽井沢の街を散策するのと同じだと説明しています。

Q400型機との大きな違いは、エンジン。
俊足が故に、大型のエンジンに主輪を格納するスペースがあって、高翼ながら視界が一部さえぎられるQ400に対し、ATR機の主輪は胴体にあって、視野が広く眺めが良く感じました。

沖永良部空港での機体 車椅子も使えるスロープのタラップが特徴zoom
沖永良部空港での機体 車椅子も使えるスロープのタラップが特徴

1名の客室乗務員が、ルートマップを配り、ドリンクのサービスを行い、最後に絵葉書まで配ります。

機体は5,500mの高度を、440km/hの速度で南西に向かって飛びます。
桜島を左に、硫黄島、屋久島や旅の終わり近くには奄美大島や徳之島を見ながら沖永良部島へ向かいます。

復路では、当日噴火した新燃岳の噴煙の影響で、機内に硫黄の匂いが入りこむハプニングもありながらも空の旅を満喫しました。

機内の様子zoom
機内の様子

リージョナル機の未来
日本でATR機に適する路線は70余り。2025年までに100機導入の目標を掲げます。MRJも含めた100席以内リージョナル機の動向は活発で、今後動きがありそうです。

ATRはその中で、ひとつの指針を示してくれました。

協力:ATR Aircraft ⇒ http://atraircraft.jp/

注:機材の所要時間比較部分を修正しました(2017年11月2日)

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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