旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2017年10月27日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

花の香りと甘~いハニーに癒される、カナダ・ケロウナのオーガニックファーム

ラベンダーの見頃ごろは9月いっぱいまで。来年の開花をお楽しみに!zoom
ラベンダーの見頃ごろは9月いっぱいまで。来年の開花をお楽しみに!
前回のコラムで紹介した『Tantalus Vineyard(タンタラス・ヴィンヤード)』を訪れたら、ぜひとも立ち寄りたいスポットをご紹介します。どちらも、ワイナリーから車で数分の距離。3カ所合わせて巡るのがオススメです。

ハーブ好き、料理好きにはたまらないラベンダー園

紫色のラベンダー、日本のものとは微妙に形が違うアジサイ、色とりどりのワイルドフラワーなど、まるで夢の国のお花畑に迷い込んだ気分になれるのが、『Okanagan Lavender Farm(オカナガン・ラベンダーファーム)』です。1950年代から続く家族経営のファームでは10年近く前まではリンゴやブドウなどのフルーツを栽培していましたが、風の影響を受けやすい地形のため、2008年からはハーブと花の栽培に切り替えたそう。現在では、ラベンダーを中心に料理用のハーブ15種類とシナノキ、バラなどを育てています。
先代からのファームを受け継ぐ、オーナーのアンドレアさん。毎日花の香りに囲まれて幸せそう。zoom
先代からのファームを受け継ぐ、オーナーのアンドレアさん。毎日花の香りに囲まれて幸せそう。
花のシーズンは園内を自由に散策することができます。足を運ぶたびにラベンダーやローズマリーの香りが立ち上るのが心地よく、好みのハーブを集めてポプリやハーブウォーターづくりの体験も行っています。
料理好きの人へのお土産にオススメしたいのが、ドライハーブ。ここで栽培されたものから作ったハーブティーやシロップ、ゼリーは地元のレストランにも提供していて、フレッシュハーブを好んで使うシェフも多いとのことでした。

アロマテラピー用のエッセンシャルオイルも人気があり、オリジナルのスキンケア用品、石けんなどもショップで販売しています。農薬、除草剤を使わず育てたハーブから作られているので、肌にも安心です。
●Okanagan Lavender Farm(オカナガン・ラベンダーファーム)
http://www.okanaganlavender.com

豊かな実りをもたらしてくれる、ミツバチたちの楽園

ミツバチの巣箱の中をのぞいたことがありますか? ラベンダーファームから直線距離で約500m離れた場所にある『Arlo's Honey Farm(アーロズ・ハニーファーム)』では、ビーキーパー(養蜂家)が巣箱の中身を紹介してくれるツアーを実施しています(5~8月、要予約・有料)。
ファームで販売する野菜の収穫ができるのも、働き者のミツバチのおかげ。zoom
ファームで販売する野菜の収穫ができるのも、働き者のミツバチのおかげ。
このファームの巣箱は、ふたの部分は新聞紙のリサイクル、外枠も木材会社から提供してもらうリサイクル木材を使っています。まず、空の巣箱を分解し内部の構造を教えてもらったら、デモンストレーション用の巣箱が置かれた場所へ。ここで、網越しにはなりますが実際の巣箱を開け、ミツバチとハチミツがみっしり詰まった巣を見せてもらえます。

このファームはミツバチに悪影響を与える農薬、殺菌剤、除草剤は一切使わないオーガニック農園。害虫の発生を防ぐため、ニンニクやマリーゴールドなどをたくさん植えています。ミツバチが巣箱に農薬を持ち帰る心配がないので、そのハチミツも安心して食べられるというわけなのです。
ファーム内に置かれたミツバチの巣箱。1箱に8万匹のミツバチがいるものもあります。zoom
ファーム内に置かれたミツバチの巣箱。1箱に8万匹のミツバチがいるものもあります。
ミツバチと農園、ワイナリーの見事な連携に拍手を贈りたくなる!

ミツバチは甘い蜜を運んでくるだけではありません。蜜を集めながら野菜や果物の受粉も促します。その恩恵にあずかっているのが、近隣の農園であり、約2km離れた場所にある『Tantalus Vineyard』。ミツバチの行動半径は約4kmといわれているので、最初に紹介したラベンダーファームへも近くのワイナリーへも、ここのミツバチが遠征していることは間違いありません。これらの3カ所がみんな、農薬や除草剤などを使わない農法にこだわっていることには大きな意味があるのです。
デモンストレーション用の巣箱の中はこんな感じ。蜜がみっしり詰まっています。zoom
デモンストレーション用の巣箱の中はこんな感じ。蜜がみっしり詰まっています。
ショップでは園内で採れたハチミツを販売し、無料でテイスティグもできます。ところで、1匹のミツバチが一生のうちにどのくらいの蜜を集めるのか、知っていますか。なんと、わずかティースプーン1杯程度なのだとか。それを聞いたら、働き者のミツバチがとても健気でいとおしく思えてきました。
ショップではワイルドフラワー、アニスなど約10種類のハチミツをテイスティング&購入できます。zoom
ショップではワイルドフラワー、アニスなど約10種類のハチミツをテイスティング&購入できます。
●Arlo's Honey Farm(アーロズ・ハニーファーム)
http://www.arloshoneyfarm.com

ワイナリー巡りのついでのように立ち寄った2カ所のファームでしたが、思いがけずミツバチとラベンダーなどのハーブ、ブドウ畑、そしてワイン。これらがすべてつながっていることを知る旅になりました。花の香りと甘い蜜に癒されるだけではない、大人の課外授業を体験した思いです。

取材協力:
カナダ観光局 http://jp-keepexploring.canada.travel
カナダシアター https://www.canada.jp
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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