旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2017年7月2日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

パリ エアショー ライバル航空機の存在が技術を磨く

会場の様子を併設の航空博物館から見る Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用zoom
会場の様子を併設の航空博物館から見る Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用

世界最大と言われる欧州のエアショーは英仏交代で毎年この時期に開催となります。第52回パリ エアショーは、ル・ブルジェが会場。1週間の会期を経て6月25日に閉幕しました。
戦闘機の飛行シーンを見せるアメリカの航空ショーや日本での自衛隊の基地祭とは違った、ビジネス主体のもの。規模は違いますが、日本では国際航空宇宙展がそれに近いです。
世界のエアラインが機材発注を行なう場として知られ、ボーイング対エアバスの受注競争が話題になります。

日本を含む46カ国の参加で、展示機は131機。空港での開催を生かして飛行展示は38機を数えます。屋内展示は2380社、会場の広さが30万㎡を超える大規模なもの。

旅客機のリージョナル・小・中大型機のカテゴリーでライバル機が一同に介して受注のしのぎを削る、近年まれに見る競争が繰り広げられました。
公式発表以外に個別でも話が聞けましたので、展示機と共に紹介します。

★リージョナル機
今回のハイライトはMRJのエアショーデビューです。機内も公開されたのは三菱航空機の英断であり、自信を示しました。

ローンチカスタマーに敬意を表したとのことで、ANAの鮮やかなブルーの塗装はパリの空に映えていました。会場にいたJALの職員が「機体半分はJAL塗装にして欲しかった」と言っていたのが印象的です。

欧州初上陸のMRJ ここまで来たとの感慨がわきます Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用zoom
欧州初上陸のMRJ ここまで来たとの感慨がわきます Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用

MRJは2015年11月に初飛行しましたが、若干大型のエンブラエルE190‐E2が昨年、E195-E2が今年になって初飛行し、開発競争では猛烈に追い上げています。その最新鋭機が地上にあるMRJを横目にこのパリで飛行展示を行いました。

今後、E175-E2(80席クラス)が初飛行を迎えますので、MRJとまさに一騎打ちとなります。
エンブラエル社広報担当Guyさんは、MRJを尊敬していると言い、市場の活性化を歓迎しています。自信の表れか、展示機にはProfit Hunterと書き込み、ワシの顔を機首にペイントするなど、言葉とは裏腹に挑発しているようにも見えなくもありません。

MRJはANA25機、JAL32機のオーダーを含めて427機を受注。
エンブラエルE2シリーズが730機となっています。

MRJのライバル機となるエンブラエルE2ジェットの兄貴分 E195-E2機 Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用zoom
MRJのライバル機となるエンブラエルE2ジェットの兄貴分 E195-E2機 Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用

★小型機
150~200席前後の単通路小型機では、ボーイング737MAXとエアバスA320neoシリーズが張り合います。既に両社ともエアラインへの引き渡しが始まっています。

今回のエアショーでは、ボーイングの受注がエアバスを上回りました。
B737MAXシリーズ571機で、エアバスA320シリーズの326機を大きく越えています。その勢いを象徴するように、新しくB737MAX10を発表しました。今後は、LCCの伸張や使い勝手のいい席数で多くの需要があるこのクラスの競争は激しさを増しそうです。
ボーイングは更に757の後継となるような250席前後の新機種の開発を示唆しました。エアバスは、負けじとA320よりひと回り大きいA321neoで地上と飛行展示に加えて、アイスランドLCCのWOW Airへのデリバリーセレモニーまで行ないました。

ボーイング737MAX9(上)とエアバスA321neo Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用zoom
ボーイング737MAX9(上)とエアバスA321neo Canon EOS70D / TAMRON 16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO使用

長年続いた二強の牙城に割って入るカナダのボンバルディアの存在も見逃せません。CS300をローンチカスタマーのエアバルティック(145席仕様)に引渡したばかりで、機体をエアショーに持ち込みました。
今までボーイング、エアバス2社の牙城だったこのクラスをボンバルディアがこじ開けたことになります。
広報のSimonさんは、先に開発したCS100とともに、360機の受注を得ていることを説明し、一時の経営不安は払しょくされたと話してくれました。
今回のパリでは26機受注と少し寂しい状況ですが、今後に期待が掛かります。

長年小型機の牙城に入り込むボンバルディアCS300  Canon EOS70D / CanonEF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM使用zoom
長年小型機の牙城に入り込むボンバルディアCS300 Canon EOS70D / CanonEF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM使用

★中・大型機
販売価格も高く、派手に報道されることの多い複数通路の中・大型機の世界。
ここでもボーイング対エアバスは強烈に競い合っています。
展示機はボーイング787-10とエアバスA350-1000です。
それぞれが初期型に対してストレッチタイプが最新鋭機。
ボーイングの149機に対しエアバス211機の受注と、エアバスが優勢ですが、シリーズ合計ではボーイング1,223機に対し、エアバスの851機とボーイングが優勢という具合。
今回のエアショーではボーイング59機対エアバス16機の受注と、こちらもボーイング優勢となりました。

エアバスA350-1000(上)とボーイング787‐10 Canon EOS70D / CanonEF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM使用zoom
エアバスA350-1000(上)とボーイング787‐10 Canon EOS70D / CanonEF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM使用

ライバルの存在が技術を磨いていく。
エアショーを見ながら、競合相手が存在する大事さを見ることのできた有意義な時間を過ごしました。

来年はイギリスのファーンボローで7月16日~22日の開催。
観光しつつ先端の航空宇宙技術に触れて見るのも良いかも知れません。
航空機の開発がどのような競合をもたらすか、楽しみです。

パリエアショー ホームページ(英語)

⇒ https://www.siae.fr/en/

ファーンボローエアショー2018

⇒ https://www.farnboroughairshow.com/trade/

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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