旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2017年2月7日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

ビートルズやデヴィッド・ボウイが愛したロンドンの社交場で体験する伝統とホスピタリティ

ロンドンを代表する繁華街、リージェント・ストリートに面したエントランス。zoom
ロンドンを代表する繁華街、リージェント・ストリートに面したエントランス。
長い歴史をもつヨーロッパにあり、つねに新しいカルチャーを生み出し世界に影響を与え続けているロンドン。この街には「誰々が愛した……」とのエピソードとともに今も語り継がれる場所がいくつも残っています。高級ブティックが軒を連ねるショッピング街と芸術家が集うソーホー地区に近く、世界的に有名な劇場街・ピカデリー・サーカスがあるリージェント・ストリートの『HOTEL CAFE ROYAL(ホテル・カフェ・ロイヤル)』も、そんな場所のひとつ。

伝統的な外観が街の景観に見事に溶け込み、現在はホテルとして営業する『カフェ・ロイヤル』の創業は1865年、フランスのワイン商人がカフェとしてオープンしました。古くはイギリスを代表する作家の一人オスカー・ワイルドや政治家のウィンストン・チャーチルが、その後ケーリー・グラント、エリザベス・テーラーといった名優、アーティストではビートルズ、デヴィッド・ボウイ、スポーツ界ではモハメッド・アリなど、そうそうたる人物が常連として名を連ねるロンドンの社交場でした。
かつてオスカー・ワイルドがたびたび食事に訪れた『オスカー・ワイルド・バー』からは、その息づかいが聞こえてくるよう。zoom
かつてオスカー・ワイルドがたびたび食事に訪れた『オスカー・ワイルド・バー』からは、その息づかいが聞こえてくるよう。
この歴史的スポットともいえるカフェをホテルとしてリニューアルするにあたり、設計を担当したのは世界中の名建築をいくつも手掛けるディビッド・チッパーフィールド建築事務所。伝統ある建物の景観を残し文化財に指定された内装をみごとに復元しつつ、最新設備を備えた宿泊施設の増築とスパ施設の新設には数年を要したといいます。その結果、古き良き時代の伝統と革新的なデザインが融合した魅力あふれるホテルが誕生したのです。

1800年代の開業当時の雰囲気を味わえるのが、クラシックなエレベーターの隣りにあるにある『Oscar Wild Bar(オスカー・ワイルド・バー)』。当時の呼び名だった『Grill Room』のサインがあるドアを開けると絢爛豪華なロココ調の空間が広がり、かつての文豪や名優たちが集った時代に一瞬にして引き込まれるよう。
歴史を感じさせる空間で楽しむアフタヌーン・ティー(上)。カクテルタイムは『グリーン・バー』で。zoom
歴史を感じさせる空間で楽しむアフタヌーン・ティー(上)。カクテルタイムは『グリーン・バー』で。
現在は午後から夕方のみアフタヌーンティー専用のレストランとしてオープンし、週末には観光客を中心になかなか予約が取れないほどの人気となっています。

夜になると落ち着いた雰囲気でカクテルを楽しめる『Green Bar(グリーン・バー)』は、オスカー・ワイルドが好み"禁断の酒"の別名をもつリキュール、アブサンの緑色にちなんだものだそう。通りからも気軽に立ち寄ることができるため、ロンドンっ子たちの夜の社交場になっています。
最新設備を備え、ビジネスパーソンにも人気の客室(上)。ここを愛した著名人の肖像写真が飾られた『ザ・カフェ』では朝食やデザートタイムも。zoom
最新設備を備え、ビジネスパーソンにも人気の客室(上)。ここを愛した著名人の肖像写真が飾られた『ザ・カフェ』では朝食やデザートタイムも。
増築された客室棟のゲストルームは160室。室内照明のオンとオフ、カーテンの開閉、TVや音楽もタッチパネルでコントロールできる最新設備を備えながら、格子をあしらったエントランスと木製の壁面からはどこか和のテイストも感じられます。夜のターンダウンサービス時には、ミネラルウォーターとともに翌日の天気と最低/最高気温が書かれたカードが届けられ、天気が変わりやすいロンドンでこれが思った以上に役に立ちました。

朝食は1日目はオールデーダイニングで、2日目はリージェント通りを眺めながら過ごせる『The Cafe(ザ・カフェ)』に案内されました。連泊だったため異なるロケーションで…との配慮だったのでしょうか。通りに面したカフェは黄金色の大理石の空間が朝の光に満たされ、清々しいブレックファスト・タイムを過ごすことができました。ここでは季節のデザートを楽しむこともできます。
地下のスパ施設。ライトアップされたプールの幻想的な空間にも癒されます。zoom
地下のスパ施設。ライトアップされたプールの幻想的な空間にも癒されます。
そして、地下空間にまったく新しく登場したのがスパ施設です。全7室のトリートメントルームと、ロンドンの都心では珍しい大型プールを備えた『Akasha Holistic Wellbeing Centre(アカシャ ホリスティック ウェルビーングセンター)』では水中マッサージ、ワッツのほか30以上のトリートメントメニューから好みのコースを選ぶことができます。もしエリザベス・テイラーの存命中に完成していたら、「リズ・テイラーが好んで通ったスパ」という、新たな伝説が生まれたのかもしれません。
サービスとホスピタリティにも伝統と革新を感じるホテルです。zoom
サービスとホスピタリティにも伝統と革新を感じるホテルです。
最後に、滞在中に印象的だった出来事をご紹介しましょう。宿泊したのは昨年のクリスマスシーズンの週末。しかも場所がロンドン有数の繁華街でもあり、ディナーのレストランの予約をコンシェルジュに相談すると、近くにオススメの店があるので空席の有無を確認してくれるとのこと。結果を知らせてくれるよう携帯電話の番号を伝えて出かけたところ、お昼近くにショートメールのメッセージで予約が取れたことと店名、住所と電話番号が届きました。外にいると電話がかかってきても気づかないことがあるし、すぐにメモが取れるとも限りません。こうして文字情報で送ってもらったほうがずっと便利です。ちょっとしたことですが、ゲストに対するさりげない心配りを感じました。

歴史あるカフェの趣を残しつつ、新たな五つ星ホテルとして生まれ変わった『ホテル・カフェ・ロイヤル』。実際に滞在してみて、伝統とともに時代に融合したサービスとホスピタリティを感じた出来事でした。このとき案内してもらったレストランのディナーが満足できるものであったことはいうまでもありません。

●HOTEL CAFE ROYAL(ホテル カフェ ロイヤル)
68 Regent Street, London UK
+44(0)20 7406 3322
www.hotelcaferoyal.com

【協力】
ザ・リーディング・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド日本支社
TEL 0120-086-230
jp.lhw.com/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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