旅の扉

  • 【連載コラム】coffee x
  • 2015年11月24日更新
アムステルダムカフェより
カフェエッセイスト:安齋 千尋

Coffee x Cocktail time

Cacciata dei progenitori dall’Eden
アダムとイブは善悪の知識の樹の果実を食べて神の怒りに触れエデンの園から地上に追放されましたー。
楽園を泣きながら追われても人は生きていけるもので、BBCをつけて地上で起こった隣の国の惨事にため息をつき、いつものカフェの前でオレンジ色の傘を一緒にさしているカップルがかわいくて、温かい蒸気のこもる窓際から凍るような霧雨と紅葉した葉が舞うのをぼうっと眺めているカフェ時間です。
国家でない”単位”の集団を相手にする場合は戦争とは定義されないことになっていますが、まるでゲームのようにそして文字通りSonyのプレイステーションやMicrosoftのXboxがテロリストの連絡手段に使われているという記事を読むと何もかもリアリティを欠いている気がする2015年秋のAmsterdam。
この季節アムステルダムは雨が多く日照時間も短いため、暗い時間を利用した夜のイベントが増えます。たとえば毎年11月の1週目に開催されるMuseum Nacht (深夜美術館)では19時から深夜の2時まで美術館が開放され由緒正しいアートが展示される中にDJブースや照明が入りカクテルタイムがはじまります。

Espresso Martini 
さて、今回の『Coffee x』は夜のcoffeeの甘い誘惑ーcocktail time.
先日、気が置けない友人とAmsterdamの和食やさんでたらふく食べた後、素敵なBarでお酒を飲むことにしました。happyな口福な友よいつもどうもありがとう。彼が注文したのがこのEspresso Martini。カウンター越しのバーテンダーのかっこよさもさることながら、魔法のようにキラキラとカクテルを作っていくことや最後にコーヒー豆をのせていくところまで細やかな動きに釘付けです。そしてひとくちー美味しい♡Espresso MartiniはEspresso, Coffee liquor, and Vodkaのカクテルなので、コーヒーが好きな人にはまさに媚薬です。80年代Londonのsohoで伝説のバーテンダーDick Bradsellがつくったこのカクテルは、カウンター越しの魅力的な女性がバーテンダーに伝えたリクエスト、Make a drink to “wakes me up and then Fxxk me up”.「眠いのよ。目を覚ますようなカクテルを作ってちょうだい。and-」という会話から作られた強気な女性の飲み物なのだそうです。私たちが立ち寄ったRestaurant / Bar IZAKAYAもまたセクシーな大人の集まる場所、Sir Albert Hotelというboutique hotelのロビー階にあります。アジアンフュージョンのお店は流行っていますが、前菜からデザートにいたるまで料理の味も見た目も、お店の内装もきちんとFruitfulなというか、艶かしいテイストが味わえる空間にうっとりでした。

大人な時間&禁断の果実とCoffeeの続き
私はホテルが好きですが、高級なホテルでCoffeeを頼むときのBonbonは魅力的です。
このデザートは2015年No.1。L’Europeという5つ星ホテルのレストランBord’eauのデザートです。まわりをコーティングしているガラスのような部分は飴細工でできているのでカシャリとフォークが入っていく様子も美しく、真ん中はリンゴのシャーベットで冷んやリ、種のところはカリンとチョコレート。そしてベースのタルトは甘く温かい極上のデザートでした。さてデザートに続き、Coffeeとトローリーにのったbonbonたちが登場。ココナッツでできた食べられる土の上にチョコレートの木の実をいただいて、至福のCoffeeタイム。陽が当たる日中の窓際とは違う、妖艶な宵のカフェde甘美なひとときに酔わせていただきました。

Cocktail timeのドレスコードの話。
ホテルも好きだけど、関連して私はテーブルマナーやしきたりみたいなことが好きです。
古い映画の貴族の躾を真似るようで緊張してすっと背筋をのばすような瞬間や、おばあちゃんの時代から伝わるおうちのきまりごとを守りたいと思っています。京都で仲居を経験した3年間は厳しかったのですが一人前のレディになるにはきっと必修科目だわと思っていました。Wikipediaによれば、カクテルドレスは、夕方のフォーマルな集いに着るドレスのことで、正装のアフタヌーンドレスとイブニングドレスの中間にあたり、丈の短いイブニングドレスの呼称だそうです。本式のイブニングドレス(靴がかくれるくらいの長さ)の豪華さに比べ、粋さ、シックさが求められる、とのこと。ヨーロッパ(西洋東洋問わずって現代も分けられるかわかりませんが、)厳しいドレスコードは大切でCocktail Timeの楽しみでもあります。

『You’re A Doll 2』& 『The Temptation of Adam and Eve』
開かれたページのMasolino da Panicaleの絵画エデンの園アダムとイヴは人形のように美しく理想の体に描かれているといいますが、その横でセルフィーをとる人形が飾られたギャラリーを運河沿いに見つけました。神話の女神や古典的な絵画のレプリカとしてバービ人形が並ぶ空間は、まだそこだけ理想の楽園、聖域のようです。
芸術なのでそれぞれの理解があっていいと思うので、私は今朝のニュース映像で見たテロリストの女の子を思いだすのでした。ベールで顔を覆い、足下はジャージ姿、両手でピースをしてセルフ写真を撮る女の子。自爆テロの首謀者と誤報の後、結局、彼女はテロに深く関与していますが実際自爆した本人ではないそうで、パーティガールだった彼女がなにかに急激に惹かれてテロに関わってしまったとのだと報道されていました。Coffee x は大好きなカフェでヨーロッパの生活を綴っていますが、末筆に11月13日テロリズムについて書き残したいと思います。
13日の金曜日、私はジェイソンが登場する1980年の作品FRIDAY THE 13THを友人と映画館で見て、帰りに自転車が盗まれ帰宅という日でした。自転車がなく深夜バスに乗り、暗い車内の同じように遅くなってしまった若者や観光客が乗るバスの席で携帯のニュースを見ていました。フランスとアムステルダムはベルギーを通り鉄道で2時間と少し、テロリストがベルギーに潜伏していたこともあり震撼という空気が伝わるようでした。なぜまたフランスなのでしょうか、14日のThe Telegraphの記事によれば(この記事ではすでにマリの名前も挙がっていました)今回はフランス軍のシリア攻撃を根拠にしていましたが、フランス外交はイスラム過激派の動きに積極的に攻撃する姿勢をとっていることが概要です。事件の前の週もHollande大統領はペルシア湾に戦闘機を配備することを発表しました。Over 10,000 French troops are currently deployed abroad – over 3,000 in Western Africa, 2,000 in Central, and 3,200 in Iraq. というデータが参照されています。
外交を動かすパワーは、<国際関係のバランス+国内軋轢>という定理は当てはまり、フランスはほかのEU諸国に比べると国内のイスラム教徒の生活環境が悪いのです。ヨーロッパでもイスラム教徒の割合が多いフランスですが、日常生活ではたとえばブルカの着用が禁止されたことや、刑務所に入っているイスラム教徒の割合が圧倒的に高く過激化してしまうそうです。
私はヨーロッパで生活をしていて、制度で国境をなくしてもやはり越えられない人種の壁を感じることがあります。幸いなことに、と未来も言い続けたいと思いますが、私は日本人なので嫌な差別はあまりなく、礼儀や文化を重んじることやアニメや最新技術など興味を持たれることが多いのです。方や、中東系の人が住むエリアはあまりよく思われなことが一般的で、話し方も少し違うし、家族も閉鎖的な感じがします。ソフトパワーという言葉は流行りすぎていますが、でも武器の量で国の強さは量れない時代、パワーと同義語で価値は国から地域とにアメーバ状に拡大するのではなく個人に凝縮していくものだと思います。Steve Jobsというカリスマがいて美しいフォルムのAppleのコンピューターを開き、スターバックスのコーヒーの香りの中に座っている。たったこれだけでアメリカ西海岸は世界中の人が知る住んでみたいと都市になりました。一緒にカフェで働いた同僚のアルゼンチン人の男の子はお客さんひとりひっとりに甘い言葉をかけました。how are you? I’m fine because I see you today. + ウィンク。 どの国籍のお客さんも老若男女思わず笑顔になる瞬間を見ました。同僚全員に毎朝挨拶のキスとジョークを交わすこの人とどうやったら戦争を起こせるのかしらと思ったものです。
旅をすることは実際に相手を自分で触って知ること。世界中の何からも守りたい大好きな人をもっと理解するため、その人の国の学びたいと思ったり文化に夢中になることは現代の何よりも強いパワーになるのではないでしょうか。美味しい中東の肉料理、素敵なデザインの布やタイル、コーヒー、セラピーにも使える上質なオイル、ポイントはこれらのアイテムが素敵な個人によって魅力的に大切に広がること、逆にひとりひとり冷静に賢くいなければと思います。人を殺す人のまたは国の売り物には手を付けないこと。残念ながら少々自爆テロを起こしたところで、その個人は世界の印象に残ることはなく、残っても負のソフトパワーその国やさらに宗教までも腐敗させて状況は悪くなるばかりであることという結果がデータ化されるように可視化できるように何かできることはないかと、今は文章に書き残しておきます。

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ArtAmsterdamAustralia
-oh, and the dolls, they are about identity. Especially female, with reference to art through ages. - Mark Pierce アートはここに在り完結するものであってwebsiteもFacebookのページもありませんとのこと。
Prinsengracht 128 (Cafe De Prins と Cafe Westerの間)
email: artamsterdamaustralia@gmail.com
IZAKAYA
http://www.izakaya-amsterdam.com/home.html
Sir Albert Hotel 1F
Address: Albert Cuypstraat 2-6 1072 CT Amsterdam
予約: +31 (0) 20 305 3090
Bord’eau
http://bordeau.nl
Hotel l’Europe 1F
Address: Nieuwe Doelenstraat 2-14, Amsterdam, 1012 CP, Netherlands
予約: +31 (0) 20 531 1619

カフェエッセイスト:安齋 千尋
Amsterdamに住んでいます。外国で暮らすため、京都で仲居をしながら学んだ日本、Londonでの宝物の出会いがありヨーロッパにきて10年以上が経ちました。世界中どこにいてもいいカフェに出会うことがとても楽しみです。入った瞬間の香り、音、新聞、いつものバリスタと目が合うこと、私の日々の幸せな瞬間はカフェにあります。
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