トラベルコラム

  • 【連載コラム】トラベルライター岩佐 史絵
  • 2015年3月14日更新
贅沢☆旅スタイル
Writer:岩佐 史絵

マッサンも食べたかも? スコットランド美味探訪

さすが世界遺産、の美しい街並みを誇るエディンバラzoom
さすが世界遺産、の美しい街並みを誇るエディンバラ
 NHKの連ドラを欠かさず見ている人は意外と多い。先日 娘と一緒にロンドンに行ったときも、飛行機の中で知り合った英国人のアーティストさんが「マッサンにハマっているので、帰国してからもなんとか観たい!」と絶賛していた。内容を知らない人のためにちょこっと説明すると、『マッサン』はニッカウヰスキーの創設者・竹鶴政孝氏とその妻、リタの生涯をモデルに、彼らが日本のウイスキーをつくるまでの奮闘を描いた物語だ。まだ少なかった国際結婚、日本で初めての国産ウイスキー、戦争と、さまざまな試練が二人を襲うそのストーリーに目が離せなくなるのもよくわかる。
 ところで、リタ(『マッサン』の作中では「エリー」)はスコットランド出身である。竹鶴氏がスコットランドへスコッチの作り方を学びに行ったときに知り合い、恋に落ちたという。つまりニッカウヰスキーがお手本にしたのはアメリカでもアイルランドでもなく、スコットランドのウイスキーであったわけで、実はスコットランドでも日本のウイスキーといえばニッカが人気なのだそう。へぇ~。そんなウイスキーの郷、スコットランドへ。“マッサン”も味わったであろう、美味を探しに行ってみた。
チョコレートと一緒にいただくスコッチ。テイストの違いにちょっと驚きzoom
チョコレートと一緒にいただくスコッチ。テイストの違いにちょっと驚き
 まずはやっぱり“マッサン”も学んだスコットランドのウイスキーを飲まねば始まるまい。訪れたのは、ディーンストン蒸留所Deanston Distillery (http://deanstonmalt.com/our-whisky)。50年の歴史があり、日本ではまだあまり売られていないメーカーだ。工場見学もできるけれど、お楽しみはなんといってもウイスキーの飲み比べ。スコッチウイスキー特有のスモーキーな薫りが強いものから、フルーティなものまでさまざまなウイスキーを紹介してくれる。おもしろいのは、水を入れると味ががらりと変わること。「入れる」といってもスポイトで1滴、というごく少量。それだけでとたんにまろやかで飲みやすくなったりするので驚きだ。ちなみに、水はミネラルウォーターなんかではなくて単なる地元の水道水。「それが一番ウイスキーに合うんだよ」とのこと。ウイスキーは水を入れないでいただくのがツウかと思っていたが、こんな飲み方はなんだかツウっぽい。
やっぱり肉でしょう! やわらかさが自慢のアンガスビーフzoom
やっぱり肉でしょう! やわらかさが自慢のアンガスビーフ
 蒸留所から車で1時間ほど、風光明媚なリゾートとして知られるピットロッホリーへ。ここにはなにがあるか? というと、アンガスビーフである。アンガスビーフの郷・アバディーンに近いだけなのだけれど、スコットランド人の避暑地として有名なエリアなためナイスなレストランやホテルが多いのだ。
 テイ川に面した町はずれにあるEast Haugh House(http://www.easthaugh.co.uk)は築350年という年季の入った建物が印象的なフィッシングロッジ。併設のレストランでは川で獲れたての新鮮なサーモンがいただけるが、料理がおいしいことで知られいつでもかなりにぎわっている。やっぱりここはサーモンか……と迷いに迷って、やはりアンガスビーフをチョイス。やわらか~ 肉汁じゅわ~ なお肉にワイルドマッシュルームのソースがたまらない(←きのこ好き)。脂がしつこくないのがおばちゃ……もとい「アラフォー」にはありがたく、けっこう大きいのにぺろりといただけてしまった。
 Wikipediaによると、アンガスビーフはかなり歴史が古く、13世紀にはすでに文献に記されているとか。1916年には日本に輸入され始めたそうなので、もし“マッサン”がスコットランドで食べたいものリストを作っていたら、このお肉もそこに載せていたかもしれないな、なんてちょっと思う。
朝からがっつりいただくのが英国流。大きなブラックプディングが絶品!zoom
朝からがっつりいただくのが英国流。大きなブラックプディングが絶品!
 ピットロッホリーまで来たなら、町からも歩いて行ける距離にあるFonab Castle Hotel(http://www.fonabcastlehotel.com)まで足を伸ばそう。湖畔(ホントは川の一部だそう)でのアフタヌーンティーは最高に気持ちがいいし、室内もチェック柄を基調とした内装でいかにもスコットランドといった雰囲気。だがここで一番おすすめなのは朝ごはんだ。
 ソーセージにベーコン、豚の血と穀物類を腸詰にしたブラックプディングなどがワンプレートに乗った英国風の朝ごはんはマストトライ。イギリスやアイルランドのあちこちで朝食にブラックプディングをいただいてきたが、このホテルのが一番おいしい! なんだろう、ふんわりしていて舌の上でほろりとくずれるやさしい食感、肉とは違ううまみがほんのり漂う上品な味わい。ブラックプディング、特に好きでも嫌いでもなかったが、ここのは間違いなく「好き」である。下に大きなマッシュルームがしいてあるのもうまみのひとつかもしれない。ブラックプディングが苦手、という人はぜひトライしてみてほしい。
 あともうひとつ、おもしろかったのはオートミール。はちみつにクリーム、ブラウンシュガーがついてくるのはまぁふつうとして、もうひとつ、スコッチが添えられていたのだ。うん、これはおいしいに決まっているよ。次はこれもトライしてみよう。と心に誓った。スコッチづくしの”マッサン”も、こんな食べ方を知っていたかしらん、もうすぐ終わっちゃうドラマ『マッサン』を思いつつ、そろそろ旅も終わりである。
機内食って本当に進化しているよねぇ、としみじみ思う、カタール航空のメッツェzoom
機内食って本当に進化しているよねぇ、としみじみ思う、カタール航空のメッツェ
 ところで、今回のグルメな旅に利用したのは、昨年からエディンバラ線に就航しているカタール航空(http://www.qatarairways.com/jp/jp/homepage.page)。ドーハ/エディンバラ間を7時間のフライト時間で結ぶ。中東系のエアラインのサービスの良さには特筆すべきものがあるが、カタール航空もまた、思わず「おおっ」とうなってしまうようなグルメなサービスが目白押しであった。
 グランドメニューを開いてみると、まずは同社アッパークラスの機内食メニューの監修を手掛ける4人のシェフのご紹介。西洋料理のTom Aikens氏、アラブ&地中海料理のRamzi Choueiri氏、インド料理のVineet Bhatia氏、そして和食&南米料理のNobu Matsuhisa氏とそうそうたる面々。幅広くメニューがカバーされていることがうかがえる。エディンバラからの帰途で前菜にお蕎麦をチョイスしたら「おかわりはいかが?」と勧めてくれたのがちょっとうれしい。気さくである。日本路線ではないのに和食のチョイスがあったのも感激だ。
 だがあたくしのイチオシはどの路線でもいただける、「アラビア風メッツェ」だ。ピタパンにサラダ、フムス(ひよこ豆のペースト)などがセットされていて小食の人ならこれだけでお腹一杯になりそうなボリュームに、レストランでいただくのと変わらない味わいなのだ。しっとりふっくらしたピタパンやしゃっきり新鮮な野菜、クリーミーな食感のフムスなど、ヘルシーでお腹にもやさしい。グルメ旅にはグルメなエアラインを選ぶものだなぁ、とぱんぱんになったお腹をなでながらにんまりしたのであった。
スコットランド観光局 → www.visitscotland.com
Writer:岩佐 史絵
旅に貴賎なし! 旅をしていないと血中旅度が下がってお腹が痛くなってしまうほどの旅好きが高じてトラベルライターに。ONもOFFも旅一色。妊娠中も子育て中も闘病中も行きたいところには必ずでかける体力自慢。著書『人生のサプリを見つける旅ガイド』(ソニーマガジンズ刊)ほか。
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